M4 Mars 4 初回ハンズオン
技工室の狭い作業台で、講師と受講者がMars級の光造形プリンタと後処理道具を前に初回ハンズオンを始める生成イメージ。

ぶっつけ本番はやめよう!まずは診断モデルから

Mars 4 初回ハンズオン講義 初版

歯科医院の技工室で、初めて光造形3Dプリンタを触る技工士向け。 Mars 4で診断モデルを準備し、印刷から後処理、結果確認まで一通り進める。

120分設置から後処理、結果確認まで
1人狭い技工室で本人が手を動かす
Mars 4講師持参の実機で操作
LINE相談失敗写真と設定記録を残す

今回のゴール

参考模型の本番印刷ではなく、受講者が次回ひとりで診断モデルを準備・再印刷し、失敗時に現物を見てから設定へ戻れる状態を作る。

合言葉 診断モデルを出すべし。
本番はそのあと。
当日の優先順位

設置、CHITUBOXでの読み込み・設定確認・スライス・保存、診断モデル、タンク確認、後処理、写真と設定記録までを作業順に追う。主役は、現物を見てから設定へ戻る習慣を作ること。

最初に名前を合わせる部品

まずは用語の確認。講義中に「ビルドプレート」「タンク」「フィルム」と言ったら、実機のどこを指すかを先に固定する。

Mars 4風の光造形3Dプリンタを教材用に整理した生成イメージ。ビルドプレート、レジンタンク、透明フィルム、光が出る面、カバーを説明するためのベース画像。 カバー本体を覆う部分 ビルドプレート造形するレジンをくっつける部分 レジンタンクここへレジンを入れる容器 透明フィルムこの上でレジンが固まる 光が出る面下から層の形を固める
生成イメージ。
ビルドプレート 造形するレジンをくっつける部分。
レジンタンク 液体レジンを入れる容器。
透明フィルム この上でレジンが固まり、ビルドプレートが引っ張って剥離する。
光が出る面 下から層の形に光を当てる面。
カバー プリンタ本体を覆う部分。

今日の作業全体像

初回では、細かい最適化よりもざっくりと流れを覚えていく。実機は講師USBの保存済み診断ファイルで先に印刷し、PCでは印刷中にCHITUBOX練習を行う。

1 作業場所を作る 光造形レジンは有害な材料として扱う。レジンで汚れる場所とそうでない場所を、清潔/不潔のように区切る。
2 保存済みファイルで先に印刷する 今日の初回印刷ファイルはその場で受講者が作らない。講師USBの短いファイル名を確認し、印刷を先に始める。
3 レジン投入を確認する 投入は講師が行う。受講者は液面、タンク内の状態、こぼした時に広げない位置を見て覚える。
4 印刷中にCHITUBOXを練習する モデル読み込み、プロファイル確認、設定値の読み上げ、スライス保存の場所を見る。今日の印刷ファイルとは混ぜない。
5 終了待ちと準備 完了画面を確認し、すぐ外さず、受け皿、洗浄容器、撮影場所、二次硬化までの動線を整える。
6 外す前に見る ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物/設定の順に見る。外す前の状態を写真に残す。
7 後処理と記録へ進む 取り外し、IPA洗浄、エアブロー乾燥、二次硬化を通し、写真4枚と設定画面または記録シート1枚を残す。

順番を固定する理由

光造形は、気温、フィルム劣化、レジンの状態などで、以前成功していた設定でも失敗することがある。固定できる設定と段取りを持っておくと、原因を追いやすくなる。

診断モデルに絞る理由

いきなり目的のものを造形しない。失敗するとレジンを大きく失う。まず診断モデルで成功することを、本番前の条件にする。

当日の成功条件

きれいな完成品ではなく、診断モデルを出し、後処理まで回し、写真4枚と設定画面または記録シート1枚を残せること。失敗しても、相談材料が残れば次へ進める。

CHITUBOXで最初に見る場所

現場120分では、最初の印刷は講師USBの保存済みファイルで始める。CHITUBOXは印刷中の練習として、操作場所と設定値の出どころを確認する。

事前インストール

未導入の場合は、予習資料の公式リンクからCHITUBOX Basic V2を事前に入れておく。講義本編ではインストール作業を扱わない。受講者PCで起動できない場合は講師PCへ切り替え、現場では後処理と写真記録を優先する。

CHITUBOX操作説明用の画面イメージ。モデルを開く場所を確認するための注釈付きたたき台。 ここを見るモデルを開く / 読み込む

1. モデルを開く

診断モデルを読み込み、画面上にモデルが表示されたことを確認する。ここでは本番模型を読み込まない。

CHITUBOX操作説明用の画面イメージ。プリンタとプロファイルを見る場所を確認するための注釈付きたたき台。 ここを見るプリンタ / プロファイル

2. プリンタ/プロファイルを見る

Mars 4用のプリンタ/プロファイルになっているか確認する。

CHITUBOX操作説明用の画面イメージ。露光とリフト設定を見る場所を確認するための注釈付きたたき台。 値は例露光 / リフト / 層厚

3. 設定値を読む

初期露光、通常露光、リフト条件、層厚を見る。それぞれが何に関係する値かを確認し、記録する。症状を見る前に複数の値を同時に変えない。

CHITUBOX操作説明用の画面イメージ。スライスと保存の場所を確認するための注釈付きたたき台。 最後に押す印刷用ファイル / USB

4. スライスして保存する

形状データを、プリントするための断面データに変換する。印刷中の練習で保存する場合は、今プリンタで動いているファイルと混ぜないよう、practiceまたは練習を付ける。

初期露光 最初の層をビルドプレートに保持するための設定。ビルドプレートに何も付かない時は、値を触る前にタンク底・フィルム側も見る。
通常露光 毎層の固まり方を見る設定。診断モデルでは、細い線、突起、文字の出方から、弱いのか太りすぎなのかを読む。
リフト条件 固まった層をフィルムから剥がす動きに関係する。露光不足だけで考えず、剥離負荷として別に見る。
層厚 1回に作る層の厚み。見た目、印刷時間、剥がす負荷に関係するため、当日の記録に残す。
値は例として読む

画面上の数値は、操作場所を確認するための例として扱う。公式値、講師の過去設定、当日仮設定、USB保存済みファイルの値を混ぜず、どの出どころの値を見ているかを記録する。

印刷中の練習 モデルを開く、プロファイルを見る、設定値を見る、スライスと保存の場所を説明する。2回目用ファイル作成は余力枠。
設定値のイメージ 初期露光は最初にくっつける、通常露光は毎層の固まり方、リフト条件は剥がす動きとして見る。
次回の自立条件 受講者が、モデルを開く、設定値を見る、スライスする、保存する、の4語を画面で説明できる。今日の必須成果物は印刷物、写真、設定記録。

受講者向け予習

当日にやることと、今日はやらないことを先に分ける。CHITUBOX Basic V2は事前に公式リンクから入れておくが、初回印刷ファイルはその場で作らない。

当日やること

  • 作業場所を作る
  • 講師USBの保存済みファイルをプリンタで開く
  • 短いファイル名、予測印刷時間、設定値の出どころを確認する
  • 講師がレジンを入れる
  • 診断モデルを印刷する
  • 印刷中にCHITUBOXで読み込み、設定確認、スライス、保存の場所を練習する

後処理でやること

  • ビルドプレートとタンクを確認する
  • 受講者が造形物を取り外す
  • 大きめの容器内でIPAをスプレーする
  • コンプレッサーでエアブロー乾燥する
  • 5分を目安に二次硬化する
  • 写真4枚と設定画面または記録シート1枚を残す

今日はやらないこと

  • 参考模型の本番印刷
  • 大物印刷
  • 複雑なサポート設計
  • 寸法の追い込み
  • 露光、リフト、サポート、角度の同時変更
洗浄方法は当日指定に従う

水洗いレジンを使う場合でも、受講者が自己判断で水洗いとIPA洗浄を切り替えない。当日は講師が指定した洗浄方法で一巡する。

当日時間割

120分の中で、説明を終えてから印刷するのではなく、現場でしかできない後処理と写真記録を確保するために印刷開始を先に作る。印刷中にCHITUBOX練習と短い仕組み説明を入れ、後処理の時間を必ず残す。

120分で成立する前提

この時間割は、Mars 4本体が開梱済みで通電でき、講師が事前にレベリングを済ませた状態を前提にする。初回レベリング、CHITUBOXインストール、プリンタ不具合対応は120分枠に含めない。

0〜5成功条件

本番ではなく診断モデルを出す

今日の成果物は、きれいな本番模型ではなく、硬化後の診断モデルと、写真4枚、CHITUBOX設定画面または記録シート1枚、ファイル名・レジン名・主要設定値の出どころ。

  • USB内の本番模型ファイルは選ばない
  • 理論説明は合計5分までに抑える
なぜ 好きなモデルから始めると、失敗したときに原因候補が多すぎる。診断モデルで基準を作る。
受講者が確認 今日の成功は「物と写真と設定記録が残ること」だと理解する。参考模型は次の段階に分ける。
講師用 講師が止める 本番モデルや寸法追い込みの話に広がりすぎたら、診断モデルに戻す。
5〜20配置・部品

狭い机で清潔側と不潔側を決める

ここでいう配置は、開梱や初回レベリングではない。使用可能な本体を作業台に置き、PC、洗浄、乾燥、二次硬化、写真記録の動線を決めること。

  • 清潔側: PC、スマホ、記録紙、未使用手袋
  • 不潔側: 取り外しトレー、IPA洗浄容器、エアブロー、二次硬化前置き場
  • 触らない場所: 透明フィルム、LCD面、Z軸
なぜ 本体とPCが置けても、外したもの、濡れたもの、汚れたものを置く場所がないと作業が止まる。
受講者が確認 不潔側、清潔側、PCを触るタイミング、ビルドプレートを外す前に写真を撮る位置、触ってよい場所と触らない場所を指さす。
講師用 講師が止める 不潔側の手袋でPCやスマホを触りそうな時、外す前の写真を撮らずに造形物を外しそうな時に止める。
20〜30印刷開始

講師USBの保存済みファイルで始める

USB直下には今日使うファイルを1つだけ置く。ファイル名は手入力できる短さにし、例として M4_Diag_A_005_2p4_15m のように読む。

  • USBを挿し、Print / USB Files を開く
  • 診断ファイルを選び、プレビュー画面でファイル名と予測印刷時間を見る
  • 画面を写真に撮り、レジン名または当日ラベルを確認する
  • 講師がレジンを投入し、本人が液面、MAXライン、気泡・ゴミ・硬化片を見る
なぜ 最初からCHITUBOXで作り始めると、印刷開始が遅れて後処理まで届きにくい。まず後処理体験用の診断モデルを出す。
時間ゲート 15分以内は予定通り。16〜20分はCHITUBOX練習を短縮。21分以上は短い診断ファイルへ変更。30分以上は当日ファイルとして使わない。
講師用 講師が止める 設定値の出どころが混ざった時、予測印刷時間を見ずに開始しようとした時、USB内の本番模型を選びそうな時に止める。
30〜55印刷中

CHITUBOX練習と最低限の仕組み説明

印刷中にCHITUBOXを触る。練習ファイルは今プリンタで動いているファイルとは別物として扱い、保存する場合はpracticeまたは練習を付ける。

  • 診断モデルを開く場所
  • Mars 4のプリンタ/プロファイルを見る場所
  • 層厚、初期露光、通常露光、リフト条件を見る場所
  • スライス、保存のボタン位置
  • 露光・リフト・リトラクトを3分以内で説明
なぜ 今日の必須成果物はCHITUBOXで作ったファイルではなく、印刷物、写真、設定記録。練習は後処理を圧迫しない範囲にする。
受講者が確認 ビルドプレートの上下、露光、リフト、戻りのサイクル、異音や画面エラーがないかも観察する。
講師用 講師が止める 本番模型をCHITUBOXで触り始めた時、2回目用ファイル作成が長引いて後処理を圧迫しそうな時に止める。
55〜70終了待ち・準備

終了待ちと後処理準備

印刷終了後にすぐ外さない。完了画面を確認し、垂れが落ち着くのを待ちながら、写真位置、受け皿、洗浄容器、置き場所を確認する。

  • 完了画面を確認する
  • 外す前写真を撮る位置とスマホの置き場所を決める
  • 受け皿、取り外しトレー、洗浄容器、乾燥場所、二次硬化器を順番に置く
  • 汚れた手袋でPCやスマホを触らない動線をもう一度確認する
なぜ 外す前写真とタンク確認は70〜75分に集約する。ここで道具と撮影位置を決めると、写真前に状態を崩しにくい。
受講者が確認 「まだ外さない」「どこで撮るか決める」「洗浄容器と受け皿を先に置く」と声に出す。
講師用 講師が止める 完了直後に外そうとした時、写真位置や受け皿を決めないまま手を動かし始めた時に止める。
70〜100後処理

取り外し、洗浄、乾燥、二次硬化

受講者が操作する。70〜75分で外す前写真、造形物近接写真、タンク底・フィルム確認を行い、タンク側の状態を記録してから取り外す。

  • 70〜75: 外す前写真、造形物近接写真、タンク底・フィルム確認、残っている / 残っていない / 分からない の記録
  • 75〜80: ビルドプレート取り外し、造形物取り外し
  • 80〜87: IPA洗浄
  • 87〜92: エアブロー乾燥
  • 92〜98: 二次硬化
  • 98〜100: 硬化後写真
なぜ 後処理までが初回印刷。取り外し後の扱いが乱れると、結果確認と写真記録があいまいになる。
受講者が確認 外す前の診断モデル、ビルドプレートに何が付いたか、タンク側に硬化物がないか、洗浄後と二次硬化後の状態を言葉にする。
講師用 講師が止める タンク確認前に次の作業へ進む時、作業範囲の外でIPAや濡れたものを扱いそうな時に止める。
100〜115記録整理

写真中心で相談できる形にする

写真4枚と、CHITUBOX設定画面または記録シート1枚をそろえる。合格、保留、失敗は、きれいさではなく次へ相談できる材料が残ったかで分ける。

  • 外す前写真
  • タンク底・フィルム写真
  • 洗浄後写真
  • 二次硬化後写真
  • CHITUBOX設定画面または記録シート写真
なぜ 失敗相談では、写真と設定値の出どころがそろっていることが次の判断材料になる。
受講者が確認 短いファイル名、レジン名、主要設定値の出どころ、次回確認する1項目もメモし、合格、保留、失敗のどれかで仮判定する。
115〜120再現確認

次回ひとりで戻れるか確認する

次回ひとりで最初に確認する場所、失敗時に見る順番、LINE相談時に送る写真と設定、次回変えるなら1項目だけにすることを言ってもらう。

なぜ 講師が次に来るまで、受講者が同じ順番で診断モデルを準備・再印刷できる状態にする。
受講者が確認 清潔/不潔の切り分け、保存済みファイル、印刷、タンク確認、後処理、記録まで言える。
講師用 講師が止める 「何となく分かった」で終えず、写真4枚と設定画面または記録シート1枚を送る練習まで戻す。

狭い技工室での清潔/不潔

机が狭いときは、広い作業台を想像しない。レジンが付く範囲を小さく決め、PC・記録・スマホを清潔側で扱える配置にする。

プリンタ、取り外しトレー、IPA受け容器、エアブロー位置、二次硬化器、記録ノートを狭い作業台に並べた配置例の生成イメージ。
生成イメージ。横に広げすぎず、汚れてよい作業面と後処理の流れを先に決める。取り外し、洗浄、乾燥、二次硬化の具体手順は後処理セクションで扱う。

不潔側を小さく決める

レジンが付く可能性のあるものは、プリンタ前から取り外しトレー、洗浄容器までの短い範囲に収める。汚れをゼロにする発想ではなく、不潔側を先に決めて広げない。

清潔側を守る

PC、設定記録シート、スマホ、ドアノブ、水栓などを、不潔側の手袋で触るものと混ぜない。PCはプリンタの近くに固定せず、清潔側で操作しやすい場所に置く。

外す前に写真を撮る

失敗時は、ビルドプレートに付いたままの診断モデルとプリンタの状態が分かる写真を先に撮る。取り外してからでは、どこに何が残ったかを説明しにくくなる。

最初に覚える設定

この講義で最初に覚える軸は「硬化」と「剥離」。設定名を暗記するのではなく、診断モデルを見て、どの現象に戻るかを決める。

まず覚える全体像: 露光・硬化、リフト、リトラクト

MSLA方式の印刷では、通常層ごとに「露光で硬化させる」「リフトでフィルムから剥がす」「リトラクトで次の層の位置へ戻る」を繰り返す。露光と硬化は別々の大工程ではなく、光を当てた場所のレジンが透明フィルム直上で薄く固まり、造形済み部分につながる一連の工程として見る。設定を考える時は、画面上の秒数だけを見るのではなく、この1層サイクルのどこで失敗しているかを見る。

診断モデルは、作品の形や大きさ、複雑なサポートの影響をいったん外して見るために使う。見る場所が少ないので、細い線、突起、文字、ビルドプレート、フィルム側の状態を比べやすい。うまく出た場合も失敗した場合も、現物と設定値をセットで残すことで、次に戻る場所が決めやすくなる。

SVG模式図: 1層サイクルの3工程
LCD/MSLA方式で通常層が露光硬化、リフト、リトラクトの3工程を循環することを示す三角ループのSVG断面模式図。

この図では、通常層が1枚追加される流れだけを見る。初期露光や具体的な設定値にはまだ進まず、ビルドプレート側に残したい造形物、下側の透明フィルム、その間にあるレジンの位置関係を追う。

  1. 1. 露光・硬化 ビルドプレート側には、すでに固まった造形済みレジンがある。LCD側から光が当たると、透明フィルム直上の薄い層が固まり、造形済み部分の下面につながる。ここで1層ぶんが追加される。
  2. 2. リフト 固まった層は造形物側についたまま、ビルドプレートと一緒に上がる。透明フィルムは少したわみ、接触している部分が切れるところから剥がれる。ここで上側に残れないと、タンク側に硬化物が残る。
  3. 3. リトラクト 剥がれたあと、ビルドプレートが下がって次の露光位置へ戻る。固まった層の下にある半硬化レジンは左右へ押し出され、界面近傍で液状レジンと懸濁・再配置される。次の露光はこの状態から始まる。
通常層の露光硬化、リフト、リトラクトの循環を半写実的に示す補助ビジュアル。

下の画像は、上のSVG模式図をもとにした補助ビジュアル。雰囲気をつかむために使い、正確な工程名、上下関係、半硬化レジンの読み方はSVGと本文で確認する。

SVG模式図: 露光中 / リフト中の断面メカ図
MSLAプリンタの露光中とリフト中を左右2コマで比較したSVG模式図。液状レジン、LEDの光、今回固まる層、造形済み部分、透明フィルム、上側に残す力、フィルム側の抵抗、剥離点を示す。

左の露光中では、液状レジンの中でLEDの光が当たり、今回固まる層が造形済み部分につながる。右のリフト中では、上側に残す力とフィルム側の抵抗が同じ硬化層を引き合い、剥離点を境にくさび形の隙間ができる。

図内の造形済み部分にはサポートも含まれる。ただしここではサポート設計ではなく、造形物が上側に残るつながりとして扱う。剥がれたら次の層の位置へ戻り、このサイクルを繰り返す。

SVG模式図: リフト中に起きる失敗パターン
リフト中の上側に残す力とフィルム側の抵抗から、正常、何も付かない、サポートちぎれ、層間剥離を比較する4コマSVG模式図。

失敗名を暗記するより、どこに何が残ったかを見る。正常なら硬化層は上側に残る。何も付かない時は初層がフィルム側に残り、サポートちぎれでは接続部で負け、層間剥離では途中の層で分離する。

この図は原因を断定する図ではない。実際の相談では、ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物/設定の順に見て、写真と設定記録をセットで残す。

HTML模式図: 初期露光・通常露光・剥離負荷の担当範囲
初期露光 最初にビルドプレートへ保持する担当。保持されない失敗と、剥がす時に強すぎる状態の両方を見る。
通常露光 毎層の固まり方を見る担当。診断モデルの細い線、突起、文字の出方から読み取る。
剥離負荷 フィルムから剥がす時の負荷を見る担当。リフト、断面積、角度、温度、フィルム状態を露光と分ける。

初期露光: ビルドプレートに保持する設定

初期露光は、印刷の最初に造形物をビルドプレートへ保持するための設定として説明する。ここで見たいのは「付いているか」だけではない。講師実践では、取り外す時の抵抗も見て、保持されることと剥がしにくすぎないことの両方を確認する。

初心者には、初期露光を上げれば全部解決するように伝えない。ビルドプレートに何も付いていない時は、先にタンク底・フィルム側に硬化物が残っていないかを見る。現物を確認せず、初期露光だけを触る流れにしない。

見る場所 外す前のビルドプレート、タンク底、フィルム。取り外し後では、どこに残っていたか分からなくなりやすい。
講師用 講師の止めどころ 何も付かない失敗を見て、すぐ設定画面だけに戻ろうとした時。まず現物写真とタンク確認へ戻す。
言い方 「初期露光はビルドプレートに付ける設定。ただし強ければよい、ではなく、外す時の抵抗も見る。」
数値の扱い 公式値、講師の過去設定、当日仮設定を混ぜない。どの数値を話しているか、記録シート上でラベルを付ける。

通常露光: 診断モデルの細い線、突起、文字で読む設定

通常露光は、毎層の固まり方を読む設定として扱う。今回の診断モデルでは、細い線、突起、文字を読み取り要素にする。講師実践として、通常露光は0.2秒刻みで動かす想定にするが、新しい秒数やMars 4固有値はここでは追加しない。

通常露光を見る時は、診断モデルの「どの部位がどう見えたか」を先に言葉にする。細い線が消えたのか、突起が欠けたのか、文字や隙間が太ったのかで、次の判断が変わる。

診断モデルの細い線、突起、文字風の記号を見て露光状態を読むための近接生成イメージ。
生成イメージ。自作診断モデルでは、細い線、突起、文字を通常露光の読み取り要素にする。

読む順番

細い線: 出ているか、途中で消えるか、隣の線と太ってつながるかを見る。

突起: 欠ける、倒れる、太る、丸まるなど、弱さと太り方を見る。

文字: 読めない理由が、欠けているのか、隙間が埋まっているのかを分ける。

HTML模式図: 露光不足・適正・露光過多の診断モデル比較
露光不足

細い線が出にくい、突起が欠ける、文字が読みにくい。まず現物の欠け方を記録する。

暫定適正

線、突起、文字がそろって見える。これを本番前の基準として写真と設定値を残す。

露光過多

線や文字が太る、細部の隙間が潰れる。出ている量だけでなく、太り方を見る。

この読み方は初版の仮基準。自作診断モデルの仕様が固まったら、部位ごとの判定に置き換える。

剥離負荷: リフト、断面積、角度、温度、フィルム状態が絡む負荷

剥離負荷は、1つの設定名ではなく、フィルムから毎層剥がす時にかかる負荷の見方として扱う。造形物が途中で負けた時、通常露光不足だけに寄せて考えると、原因候補を見落としやすい。

診断モデルでは形を単純にして、まずプリンタ、レジン、設定、室温の基準を作る。参考模型のように面が広い形や角度が絡む形は、診断モデルで基準を作った後に進める。

リフト 造形物をフィルムから剥がす動き。速度や距離の条件は、毎層の剥がれ方に関係する。
断面積 一度に広い面が剥がれる形は負荷が大きくなりやすい。診断モデルはこの要素を単純化する。
角度 造形物の向きで、各層の断面や剥がれ方が変わる。本番モデルでは診断モデルより要素が増える。
温度とフィルム状態 温度やフィルム状態も剥がれ方に関係する。初回は追い込みすぎず、結果写真と設定値を残す。

診断モデルから設定へ戻る: 次に変える1項目を決める

失敗したら、設定を複数まとめて変えない。最初に見る順番は、ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物/設定。そこまで見てから、次に変える1項目を決める。

相談時は、外す前写真、タンク底・フィルム写真、洗浄後写真、二次硬化後写真、CHITUBOX設定画面または記録シート写真を1セットにする。設定値だけを送っても、現物のどこで失敗したかが分からない。

HTML模式図: 症状を見てから1つだけ設定を変える流れ
1 外す前に撮る ビルドプレート上の状態とプリンタとの位置関係を残す。
2 タンクを見る タンク底・フィルム側に硬化物が残っていないか確認する。
3 症状を言葉にする 何も付かない、欠ける、太る、潰れる、途中で負ける、を分ける。
4 1項目だけ変える 露光、リフト、角度などを同時に動かさない。
5 同じ形で再印刷 診断モデルで結果を比べ、写真と設定記録に戻す。

失敗診断の入口

失敗したら、最初に設定画面だけを開かない。ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物/設定の順に見る。

ビルドプレートには何も残らず、タンクまたはフィルム側に薄い硬化物が残った生成イメージ。
生成イメージ。ビルドプレート側が空で、タンク底・フィルム側に硬化物が残る見え方。
サポートは上側に残り、診断プレート本体がフィルムまたはタンク側に残ったサポート破断の生成イメージ。
生成イメージ。サポート先端で外れて、本体が下側に残る見え方。
診断プレートの途中の層が分かれて開いた層間剥離の生成イメージ。
生成イメージ。途中の層で分かれ、上下の層が開いた見え方。
ビルドプレートに何も付かない

まずビルドプレートを見て、次にタンク底・フィルム、初層まわり、レジン混和を見る。

サポートちぎれ / 本体が残る

本体がどこに残ったか、接続部で負けたかを先に見る。

歪む

印刷直後、洗浄後、二次硬化後のどこで気づいたか分ける。

講師用 安全・処理表現の扱い

IPA、濡れたペーパー、容器内液、エアブロー時の飛散、現地処理の表現は、SDS、院内ルール、施設ルール確認後に確定する。

最初に設定画面だけを開かない

失敗した時の入口は、現物を見ること。ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物/設定の順に確認してから、次に変える1項目を決める。

ビルドプレートに何も付かない時

設定値へ戻る前に、どこに硬化物が残ったかを確認する。写真を撮ってから次へ進む。

サポートちぎれ / 本体が残る時

サポートが残り、本体が別の場所にある時は、接続部と本体の残った場所を先に見る。

歪む時

歪みは、いつ気づいたかで見る場所が変わる。印刷直後と後処理後を混ぜない。

HTML模式図: 症状別に次に見る場所を決める

この図は原因を断定する図ではない。失敗名を暗記するより、どこに何が残ったかを見て、次に確認する場所を決める入口として使う。

ビルドプレートに何も付かない

  1. ビルドプレート確認外す前に、何も付いていない状態を写真に残す。
  2. タンク底/フィルム確認硬化物が下側に残っていないか見る。
  3. 硬化物を残さない残ったまま次の印刷へ進まない。
  4. レジン混和/液面混ざり方、液面、異物の有無を確認する。
  5. 初層まわりへ戻る初期露光やビルドプレート保持を疑う。

サポートちぎれ / 本体が残る

  1. 外す前写真サポートと本体がどこに残ったかを崩す前に撮る。
  2. 本体の残った場所フィルム側、タンク側、造形物側のどこかを分ける。
  3. 接続部を見る先端で外れたのか、途中で折れたのかを見る。
  4. 候補を分ける通常露光、剥離負荷、温度、角度、サポートを分ける。
  5. 1項目だけ変える初期露光だけに寄せず、同時変更を避ける。

歪む

  1. タイミングを分けるいつ歪みに気づいたかを先に言葉にする。
  2. 印刷直後角度、断面積、剥離負荷、支持の状態を見る。
  3. 除去/洗浄/硬化後サポート除去、洗浄、二次硬化で変化したか見る。
  4. 原因候補を分ける角度、サポート、後処理を一緒に扱わない。
  5. 記録へ戻す写真、設定値、気づいたタイミングを1セットにする。

後処理: 結果判定を壊さないための流れ

後処理は、印刷が終わった後の片付けではない。ビルドプレート、タンク底・フィルム、診断モデルの状態を崩さず、次回の相談に戻れる材料を残す工程として扱う。

順番を固定する

印刷が終わったら、先に外す、先に洗う、先に片付ける、をしない。外す前に見る、写真を撮る、タンク底・フィルムを見る、取り外す、洗浄、乾燥、二次硬化、記録の順に進める。

この順番を崩すと、成功していても失敗していても「どこに何が残っていたか」が分からなくなる。診断モデルは、きれいに完成させるためだけでなく、次に戻る場所を決めるために使う。

大きめの容器内でIPAを吹き付け、コンプレッサーでエアブローし、二次硬化器へ進める後処理の流れを示す生成イメージ。
生成イメージ。IPA、エアブロー、廃液、飛散対策の具体表現はSDS、院内ルール、施設ルール確認後に確定する。

外す前に見る

まずビルドプレートに何が付いたかを見る。次にタンク底・フィルムに硬化物が残っていないかを見る。外す前に、プリンタと診断モデルの位置関係が分かる写真を撮る。

取り外す

どこに何が残っていたかを記録してから外す。外した後に失敗状態を再現するのは難しいため、取り外し前の観察と写真を先に終える。

IPA洗浄

今回は大きめの容器内でIPAをスプレーする計画として扱う。水洗いレジンでも当日の洗浄方法は講師指定に従い、自己判断で洗浄方法を切り替えない。洗浄の目的は、表面の未硬化レジンを落とし、細い線、突起、文字を確認できる状態に近づけること。

エアブロー乾燥

コンプレッサーで乾燥へ進む。飛散対策の具体判断は、SDS、院内ルール、施設ルール確認待ちとして扱い、当日は講師の管理下で作業範囲を広げない。

二次硬化

二次硬化は5分目安で扱う。硬化前と硬化後で、表面の見え方、細い線、突起、文字がどう変わるかを写真で残す。

結果記録

外す前写真、タンク底・フィルム写真、洗浄後写真、二次硬化後写真、CHITUBOX設定画面または記録シート写真を1セットにする。LINE相談では、この1セットが次の判断材料になる。

なぜやるか 後処理で状態を壊すと、失敗原因を現物から戻れなくなる。印刷結果を判断できる状態で残す。
受講者が確認すること 外す前、タンク底・フィルム、洗浄後、二次硬化後の写真と、CHITUBOX設定画面または記録シート写真がそろっているか確認する。
講師用 講師が止めること 写真を撮る前に造形物を外す、タンクを見ないまま洗浄へ進む、汚れた手袋で清潔側を触る動きを止める。
講師用 未確定事項

IPA、濡れたペーパー、容器内液、エアブロー時の飛散、現地処理の表現は、SDS、院内ルール、施設ルール確認後に確定する。

設定記録シート

入力内容はこのブラウザ内に保存される。外部サーバーへは送信しない。設定値、写真、判定を1セットにして、次回の再印刷とLINE相談へ戻れる状態にする。

基本情報

スライス設定

診断モデル判定

写真と後処理

写真の有無
写真4枚 + 設定画面または記録シート1枚

外す前写真、タンク底・フィルム写真、洗浄後写真、二次硬化後写真、CHITUBOX設定画面または設定記録シート写真を残す。設定値だけを送らない。

LINE相談テンプレート

設定記録シートから相談文を生成する。未入力項目は「未記入」として残るので、送る前に足りない写真や設定値を確認できる。

最初に送るもの

外す前写真、タンク底・フィルム写真、洗浄後写真、二次硬化後写真、CHITUBOX設定画面またはこの記録シートの写真をそろえる。設定値だけを送らない。

発展項目: 中空とドレインホール

このセクションは事後レビュー用。初回現場120分では扱わず、診断モデルで基準を作った後、参考模型などの本番モデルで中空化を使う場合に読む。

中空にすると何が増えるか

中空はレジン量や重量を減らすために使うことがある。ただし、外側の形だけでなく、内部に液体レジン、洗浄液、空気の逃げ道があるかを考える必要が出る。

診断モデルの失敗診断は、ビルドプレート、タンク底・フィルム、造形物表面を見る流れで足りる。中空モデルでは、内部に何が残ったか、どの穴から抜けるか、洗浄と乾燥が通るかも記録対象にする。

ドレインホールの役割

ドレインホールは、中空内部のレジンや洗浄液を抜き、空気の通り道を作るための穴として扱う。穴の有無、位置、数、向きは、印刷方向と後処理のしやすさに関係する。

講義では「どの場所に穴があり、どちらへ液が抜ける想定か」を確認する。穴を開けたこと自体を忘れないよう、CHITUBOX画面、穴位置のスクショ、洗浄後の写真を設定記録に残す。

スライス前

中空化の有無、壁厚、穴の位置、穴の数、モデルの向きを確認する。画面上で見えている外形だけでなく、内部から液が抜ける経路を考える。

印刷後

外す前写真に加えて、穴位置が分かる写真を残す。穴から液が出るか、洗浄時に内部へ液が入って抜けるかを観察し、状態を崩す前に記録する。

後処理後

洗浄後、乾燥後、二次硬化後で、にじみ、割れ、べたつき、穴まわりの変化がないかを見る。判断に迷う場合は、設定値だけでなく穴位置と後処理の写真を送る。

受講者が確認すること 中空化したか、ドレインホールがどこにあるか、液がどこから抜ける想定かを説明してからスライスする。
講師用 講師が止めること 穴なし中空、穴位置未確認、壁厚や穴位置を記録しないまま保存、内部洗浄と乾燥を見ないまま二次硬化へ進む動きを止める。
相談時に足す情報 中空化の設定、穴位置のスクショ、穴まわりの写真、洗浄後と乾燥後の状態を、通常の設定記録に足す。
扱いの範囲

ドレインホールの具体寸法、穴埋め、内部洗浄、廃液や飛散の扱いは、モデル形状、スライサー設定、レジンのSDS、院内ルール、施設ルールを確認して決める。この初回資料では、まず「中空にしたら穴と内部も記録対象になる」と覚える。

講師用

講師チェックリスト

持参物と、本番前に潰す未確定事項を分ける。

持参

  • Mars 4 / 電源ケーブル / 延長や口数が足りる電源
  • CHITUBOX用PC / PC充電器 / USBメモリ
  • ビルドプレート / レジンタンク
  • ELEGOO 水洗いレジン / 診断モデルデータ
  • IPAスプレー / IPAを受ける大きめの容器
  • コンプレッサー / 乾燥トレー / 二次硬化器
  • 手袋 / ペーパー / スクレーパー / シリコンヘラ
  • 汚れ物一時置き / 設定記録シート

本番前に確認

  • 診断モデルのスライス済みファイル
  • USB直下に置く短いファイル名
  • 使用レジン名
  • 予測印刷時間と実測印刷時間
  • 洗浄方法
  • 二次硬化器の操作方法
  • ELEGOOレジンの正確な製品名
  • IPAの製品名と濃度
  • IPA関連廃棄物の現地処理が、SDS、院内ルール、施設ルールに合うか
  • コンプレッサーでエアブローするときの飛散対策
  • CHITUBOXで診断モデルを読み込めるか
  • 机の養生範囲

上の項目が未確定のままなら、120分完走ではなく、設置確認と操作説明までに目標を下げる。

講師用 事後レビュー・差し替えTODO

露光不足・露光過多の見せ方は、診断モデルの実物に合わせて確定する。Mars 4実機写真、プリンタ画面、CHITUBOX実スクショは、次版で差し替える。中空/drain hole、内部洗浄、乾燥、穴埋めの扱いは、詳細版の発展項目として事後レビューで扱う。